[3/25, 2011 更新8/26]

多要因分散分析 の検定力分析について






■ 2要因分散分析の事前の分析

  • 多要因の分散分析とは、複数の要因があり、それぞれの要因に複数のグループ(水準・群)があるとき、各グループ毎の平均値が有意に異なっているかどうかについて、それぞれの要因ごとに分析するものです。

     説明のために例えば「要因A:年代1,2,3,4,5」と「要因B:地域1,2,3」で不安耐性について調べたとします。不安耐性の平均値が五つの年代のグループ(5水準、自由度df=(5-1)=4)と、三つの地域のグループ(3水準、自由度df=(3-1)=2)の要因によって異なるのかどうか、ということがこの「2要因分散分析」の目的となります。
     このとき、事前の検定力分析は、「要因Aの分析に必要とされるデータ数」と「要因Bの分析に必要とされるデータ数」、そして「要因Aと要因Bとの相互作用の分析に必要されるデータ数」の三つの数字を別々に調べていくことになります。

     検定力の事前の分析では、必要なデータ数Nを調べるために、[有意水準α、 効果量ES、 検定力(1-β)]の三つの数値を設定する必要があります。ここでは、これまでの経緯からとりあえず有意水準αは0.05 (5%)と設定します。検定力Powerは、J.Cohenによる慣例で(1-β)=0.8 と設定しておきます。そうすると、最後に残るのが「効果量 ES: Effect size」となります。この効果量を求めて三つの数値が出揃うことで、「必要とされるデータ数」を事前に割り出すわけです。
     J.Cohen(1992)では分散分析における効果量ES(Effect Size)をで表示して、効果量小(Small) =0.1、 効果量中(Medium) =0.25、 効果量大(Large) =0.4」を慣例(convention)としています。なお、この効果量の数値は一元配置の分散分析の場合と同じものです。
      * 効果量の式(母集団における効果量)は以下のように示されています。
     
    f=σm/σ
     (σmは要因の標準偏差。σは母集団の標準偏差)
     実際のデータを用いて算出する標本効果量の式では、偏相関比(partial correlation ratio)を用います。
     
    f =√ [(偏相関比の二乗)/(1−(偏相関比の二乗))]
     
    このあたりの数値の意味や実際の計算方法については豊田秀樹『検定力分析入門』に詳しく説明されているのでそちらを参照してください。

  • 多要因の分散分析で必要なデータ数を事前に割り出すために、G*Powerを用いて算出するとき、次の数値が必要となります。すでに示した三つの数値を含めて書いておきます。すなわち―

    • 効果量 Effect Size f= 0.1 (効果量小)、または f=0.25 (効果量中)、または f=0.40 (効果量大)
    • 有意水準 α err prob(α過誤) α=0.05 または0.01など
    • 検定力 Power (1−β err prob) power=0.80 (J.Cohenが提唱する数値)

    • 要因の自由度 (Numerator df)
      上の例の要因Aの分析に必要なデータ数を割り出すときは Numerator df = (5-1)=4 とする。
      上の例の要因Bの分析に必要なデータ数を割り出すときは Numerator df = (3-1)=2 とする。
      要因Aと要因Bの交互作用の分析に必要なデータ数を割り出すときは Numerator df = (5-1)x(3-1)=8 とする。
      * Numeratorは「分子」の意味で、F検定において分子に「要因の平均平方和」を入れることから来ている。
    • グループの数 Number of groups
      上の例では、5水準×3水準=15となり、全部で15個のグループがあるので 15 とする。

    要因の自由度を「Numerator df=4 」として要因Aの分析に必要なデータ数を事前に算出した場合のG*Powerの画面を以下に示します。
    なお、要因Aの効果はあまり大きくないと推測されたとして、効果量f (effect siz) = 0.1 と設定しています。

    多要因分散分析 事前(要因A)

    要因A(5水準)と要因B(3水準)の2要因分散分析ですが、要因Aの検定力がPower=0.8となるために必要なデータ数は「Total sample size 1199」(緑色の下線)と算出されました。
    全部で5x3=15個のグループがあるので、「1199÷15=79.9」。すなわちそれぞれのグループのデータ数は「80」以上必要だということになります。

    なお、効果量f=.25 と中程度の効果が推測されたとしてあらためて計算すると、Denominator df = 182、Total sample size = 197 となります。197÷15= 13.13 なので、15個それぞれのグループのデータ数は「14」以上あれば良いことが分かります。
    効果量「中」(f=0.25) とは、要因Aについてみると、5個のカテゴリーの平均値が相互にある程度異なっているという状態を意味します。したがって、データ数がそんなに多くなくとも良いということが示されているわけです。ちなみに,効果量大 (f= 0.4 )のときに必要なデータ数(Total sample size) = 81 と表示されるので、15個のグループ毎ではそれぞれ「5.4 」(81÷15)、すなわち6個程度のデータ数が良いというわけです。5個のカテゴリーの平均値が相互に極めて大きく異なっているためです。


    続いて、要因Bについての検定力を分析してみます。
    2要因分散分析 事前(要因B)


    効果量f=0.1 と小さいとして、要因Bの自由度「Numerator df = 2」と入れて[Calculate]をクリックすると「Total sample size= 967」となります。967÷15=64.4なので、1グループ当たり65人以上必要と分かります。



    最後に、要因Aと要因Bの交互作用について検定力を分析してみます。
    2要因分散分析 事前(要因AxB)


    要因Aと要因Bの相互作用については、「Numerator df」の欄に「 8 」と入れて[Calculate]をクリックすると「Total smaple size = 1511」となるので、1グループ当たりに必要なデータ数は「101」人以上必要となります(1511÷15=100.73)。


    このように要因A、要因B、要因Ax要因Bの交互作用の三つについてそれぞれ「事前の検定力分析」を行います。この例でも分かるように、要因A、要因B、要因Ax要因Bの交互作用の三つの効果を知るためには、必要なデータ数がそれぞれに異なることがほとんどです。ここでは効果量= 0.1 と小さくしているため、必要なデータ数がかなり多くなっているにしても、交互作用の分析においてもPower=0.8 と高い検定力を確保するためには、合計で1511人以上の被験者を用いて研究を進めることになります。
    なお、要因Bに最も関心があって要因Aや交互作用はあまり気にならないような事情があれば、少なくとも要因BのF検定の結果についての検定力が高ければ良いわけです。その場合は合計で965名以上と、少し少なめの被験者数に設定するという研究設計が考えられます。(要因AとAxBの交互作用の検定力は0.8 よりも下回ってしまうことが予想される)


  • G*Powerソフトによる「必要なデータ数」の傾向について

    豊田秀樹『検定力分析入門』(2009)にある例を参考にしつつ、J.Cohen(1988)の数表や解説を読んでいるのですが、算出される数値には若干のズレがあります。「必要なデータ数」を各グループ毎に見てみると、たかだか1〜2程度のズレですが、G*Powerソフトでは、「各グループ毎の必要データ数」は豊田が示している例よりもだいたい「−1」程度、少し小さな数値になる傾向があります。
    これは小数点以下の計算誤差や四捨五入、切り捨てなどによる処理の違いと思われますが、G*Powerでは「Total sample size」合計のデータ数として表示されるため、「各グループ毎のデータ数」を表示するJ.Cohenの数値や豊田(2009)の数値との食い違いが大きく見えるためかなり気になります (G*Power3.1.2版のソフトでは、検出力の数値について小数以下四桁の精度を保つため近似計算を行わないとされています)。
    見た目ほどの大きな食い違いはないようなので特に問題ないと思いますが、豊田(2009, p.193)の例を取り上げて、要因A(6水準)×要因B(2水準)の場合に、「データ数」の数値のズレについて比較を示しておきます。

    * 豊田(2009: p192)では、多要因分散分析について「本章では数値の繰り下げによって、任意の検定力を満たさない標本数を返す可能性を考慮して、数値の繰り上げ処理を一貫して利用する」と書かれています。


    要因A(6水準)×要因B(2水準)の2要因分散分析の事前の検定力分析
    必要なデータ数の算出

    (大きな数字が合計データ数。括弧内が12個ある各グループ毎のデータ数)
    要因Aについて: 自由度df=5 合計グループ数12
    効果量Small f=0.10 効果量Medium f=0.25 効果量Large f=0.40
    豊田(2009) p.193 1296 (108) 228 (19) 96 (8)
    G*Power3.1.2版 1289 (107.4) 212 (17.6) 87 (7.2)


    同様に要因B(2水準)についても、必要とされるデータ数」について豊田(2009)とG*Power3.1.2の数値を対比しておきます。
    * 交互作用の自由度は df=(6-1)x(2-1)=5 となるので、結果的に要因Aについての検定力分析と同じ「必要なデータ数」となる。

    要因A(6水準)×要因B(2水準)の2要因分散分析の事前の検定力分析
    必要なデータ数の算出

    (大きな数字が合計データ数。括弧内が12個ある各グループ毎のデータ数)
    要因Bについて: 自由度df=(2-1)=1 合計グループ数12
    効果量Small f=0.10 効果量Medium f=0.25 効果量Large f=0.40
    豊田(2009) p.193 804 (67) 144 (12) 72 (6)
    G*Power3.1.2版 787 (65.5) 128 (10.6) 52 (4.3)



  • 多要因分散分析の「事前」の検定力の分析ですが…

    多要因といっても、たかだか2〜3個の要因での研究がほとんどです。また、それぞれの要因の水準数もせいぜい2〜3から多くとも5〜6個もあればというところです。理由は単純で、要因の数と各要因内の水準の数が多いと、それらの掛け算によって、必要なグループ数が多くなってしまう―。そして、それぞれのグループに必要な被験者数、被検査者数をそろえるのが容易なことではない―。
    そうした実際の状況を見ると、一般的に行われる多要因分散分析について、実はG*Powerを用いて厳密に「必要データ数」を個々に計算するまでもなく、例えば豊田(2009)が示しているような事後分析などの例を見るだけで、必要なデータ数などはだいたい推測されることになります。なお、水準数が5〜6と多い場合や三要因以上の場合は実際に計算して確認してみることになります。
 

■ 2要因分散分析の事後の分析 (Post hoc analysis)


  • 事後の検定力分析では、効果量をきちんと計算してから行う場合と、J.Cohenが示した慣例(convention)にしたがって、効果量小(Small) f=0.10、効果量中(Medium) f=0.25、効果量大(Large) f=0.40、という数値のどれかを入れて概略的に検定力を算出する場合とがあります。

    先の事前の分析で用いた例を再び取り上げてみます。すなわち、「要因A:年代1,2,3,4,5」(df=(5-1)=4)と「要因B:地域1,2,3」(df=(3-1)=2) で不安耐性について、例えば、年代×地域=5x3=15個のグループ(cell セル)のデータ数(Sample size)がすべて20人だったという場合で、全データ数(Total sample size)は15x20=300となります。

    このように研究が行われた場合、「事後 post hoc」に、要因A「年代」の検定力を算出してみます。

    • [Test family] F tests
    • [Statistical test] ANOVA] Fixed effects,special, main effects and interactions
    • [Type of power analysis] Post hoc: Comute achieved power - given α, sample size, and effect size

    • Input Parameters
    • [Effect size f] 0.25  (実測値を用いず「効果量は中くらい」だと想定した)
    • [α err prob] 0.05 (有意水準は5%)
    • [Total sample size] 300 (全データ数 5x3x 20名)
    • [Numerator df] 4 (要因A「年代」の自由度df= 5-1 )
    • [Number of groups] 15 (グループの総数 5x3)

    この結果は下の図をご覧下さい。
    Output Parameters
    • [Noncentrality parameter λ] 18.7500000 (非心分布のλパラメータの値
    • [Critical F] 2.4033200 (5%水準で有意となるためのF値)
    • [Denominator df] 285 (誤差の自由度: (20-1)x15グループ=285)
    • [Power (1-β err porb)] 0.9484892

    これにより「要因A:年代(5水準)」についての有意性検定の検定力は「0.9484」と極めて高いことが計算されました。



  • 2要因分散分析の事後の検定力分析に実際の効果量を用いる。

     ところで、研究が終わった後では、「効果量 中 f=0.25」と勝手に入れてみるのではなく、実際のデータに基づいた効果量(Effect size)を入力して正確な検定力を知りたいわけです。


  •  
  • 2要因分散分析の事後の検定力分析を「分散分析表」を用いて実施する。
(編集中…)



  • 3要因分散分析の事後の検定力分析について
  • 事後の検定力分析では「効果量 f 」の数値が必要となります。G*Powerソフトでは、[Determine]というボタンをクリックすると、効果量 f を求めるための計算パネルが右側に表示されます。入力数値としては2種類の入力方法が選べます。
  •  
 
    
 
  • From variances
    Variance explained by special effect [  ]
    σ2m (要因の標準偏差の二乗)
              Error variance [  ]
    σ2 (全体の標準偏差の二乗)

  • Direct
    Partial η2 [  ]
    偏相関係数
    [Calculate]      Effect size f [  ]
    計算させると効果量 f が表示される

   
 
 
  • 上の右側にある「効果量の計算パネル」では、分散の二つの数値を入れるか、偏相関係数を一つ入れるかして、効果量を計算します。一元配置や二元配置の分散分析までは、σσmの計算もそれほど難しくなくできますが、3要因分散分析となると、一次の主効果(A,B,C)、二次の交互作用(AxB,AxC,BxC)、三次の交互作用(AxBxC)となりかなり面倒なことになります。

    3要因分散分析については、G*Powerのサイトには詳細な説明があったので、どのくらい面倒かを実際に確認してみましたが、「効果量の計算パネル」に入れる分散の数値について理解するのに役立ちました。
     
     以下は要因A(3水準)、要因B(3水準)、要因C(4水準)の分散分析(各セル内の度数は 3 )において、36個のセルにおける平均値(m)・標準偏差(s)・セル内データ数(n)のリストです。
     
  •  
    表1
     
     
     この仮想データについて3要因の分散分析をSPSSソフトのGLM (一般線形モデル)で分析した際の分散分析表が掲載されおり、その内容をG*Powerソフトであらためて確認することで、どのような数値を用いるかなど、使い方の説明となっています。
     (G*Powerでは母数をパラメータとして用いるので、標本統計量を用いているSPSSとは、η2 の数値が異なりますが、その変換式も説明されています。なお、結果として得られる検定力そのものの数値はどちらも同一となっています。)
     


  • 表1をデータとする3要因分散分析の検定力分析の内容を以下にまとめておきます。
     
    ●元の英文の内容は → G*Powerの解説(英文+図表) をご覧ください)

    ●参考のため、数値と計算について数表を作成しました [Excel数表]
    (「読み取り専用」をクリックしてください)

 


 要因A、B、Cの主効果 

  • 36個の平均値の平均を求めることで「全体平均値」を算出します。
    全体の平均値  (grand mean) = 3.1382
  • 共通の分散 σ2 は36個の各セルの標準偏差 s をそれぞれ二乗して合計したものの平均値です。
    共通の分散 σ2 = 1.71296 ( σ2= 1/36 Σi Si2)

  • 次に要因A、B、C、それぞれの主効果を求めます。

  • 要因Aの三つの平均値、μ1 * * μ2 * * μ3 * * は次の数値です。
    なお、三つの平均値からそれぞれ全体平均( mg )を差し引いた数値にしてあります(合計が0)。
    μi * * = { -0.722231, 1.30556, -0.583331 }
    それぞれを二乗してその平均値 σA2を求めます。
    σA2 = ( (-0.722231)2 + (1.30556)2 + (-0.583331)2 ) / 3
    σA2= 0.85546

    要因Aの効果量は  fA = √ ( σA2 / σ ) なので…
    fA = √ ( 0.85546 / 1.71296 ) = 0.7066856

  • 同様にして
    要因Bの三つの平均値 μ* j * = { -0.0555556, 0.19444444, -0.1388889 }  から
    σB2= 0.02006173
    したがって要因Bの効果量は fB = √ ( 0.02006173 / 1.71296 ) = 0.10822379

    また
    要因Cの四つの平均値 μ* * k = { 0.52776944, -0.027775, -0.2499972, -0.2499972 }  から
    σC2= 0.10107731
    したがって要因Cの効果量は fC = √ ( 0.10107731 / 1.71296 ) = 0.2429212

  • ねんのため、それぞれの偏相関係数 η2を計算してみます。η2 = f2 / ( 1 + f2) の式を用います。

    ηA2 = fA2 / ( 1 + fA2) = 0.33308116
    ηB2 = fB2 / ( 1 + fB2) = 0.0115768
    ηC2 = fC2 / ( 1 + fC2) = 0.05572249

    G*Powerの効果量計算パネルには、ここで示した数値を入力することで効果量を計算してくれるわけです。「 From variances」の「variance explained by special eefect」の欄には σAやσB、あるいは σCを入れて、その下の欄の「Error variance」には σ を入れる―。
    または、「 Direct」の偏相関係数 「Partial η2」にそれぞれの偏相関係数 ηA2 、ηB2 、 ηC2 を入れることができます。
    (ここではすでに効果量 f は計算済みなので、効果量計算用のパネルを用いる必要はありませんが、使い方の解説をしています。)

  • 以下は要因Aについて検定力を求めた場合のG*Powerの画面、および「効果量計算パネル」です。




    このように要因Aは、 検定力 (1-β)は 0.9999994 と極めて高いことが分かりました。
    なお、要因Bについては (1-β)= 0.1519503、また要因Cについては (1-β)= 0.5208786 となります。G*Powerで確認してみてください。
    要因Bの検定力はかなり低く、36個のセルに各3名(回)のデータを用いてこの研究では要因Bの効果を把握できていないことが分かります(分散分析でも有意になっていませんし)。また、要因Cの検定力も0.52...と低く、こちらも不十分なことが分かります (ダミーのデータですが…)。ただし、36個のセルに各3名(回)と少ないデータ数にも関わらず、要因Aの効果は、検定力の高さもあいまって十分に確認されたことになります。したがって、この研究がもっぱら要因Aの効果に注目して計画された研究だったならば、とりあえず当初の目的は達成したことになるでしょう。
 


 2要因交互作用 AxB、AxC、 BxC

  •  2要因の交互作用についても検定力分析に必要なのは σAxB 、 σAxC 、 σBxC という標準偏差の数値です。この数値は「2要因交互作用における残差 residual」と呼ばれ次の式で表されます。ここでは、AxBの交互作用 δi j *について説明を進めます。i で要因Aの水準を表し、 j で要因Bの水準を表し、 k で要因C の水準を表しています。アスタリスク * は、それぞれの要因の部分の水準をすべて含む (水準の違いを問わない) ことを意味しています。
     
    要因AとBの交互作用を表す残差の式 δi j * = μi j * - μi * * - μ* j *
     
     μi j *は、要因Aと要因Bの3行3列、9個あるそれぞれの平均値。
     μi * *は、要因Aの3個あるそれぞれの平均値。
     μ* j *は、要因Bの3個あるそれぞれの平均値、をそれぞれ指しています。
     
     
     要因Aは3水準( i =1,2,3 )、要因Bも3水準( j=1,2,3 ) なので、残差は次の9個となります。
     
     {  δ11*   δ12*  δ13*       δ21*  δ22*  δ23*       δ31*  δ32*  δ33* }
     { 0.555564, -0.351111, -0.194453, -0.388903, 0.444447, -0.055444, -0.166661, -.0.0833361, 0.249997 }
     
     
     求める σ2AxB は、この9個の値をそれぞれ二乗して合計した数値の平均値です。したがって
     
     σ2AxB = ( (0.555564>2 + (-0.351111)2 + (-0.194453)2 + (-0.388903)2 + (0.444447)2 + (-0.055444)2 + (-0.166661)2 + (-.0.0833361)2 + (0.249997)2 ) / 9

     σ2AxB = 0.102881 となりました。これを分子にして効果量 f を計算します。
     
    (なお、分母となる σ2= 1.71296 は上で計算済みです。)


    この二つをG*Powerの効果量計算パネルに入れると、以下のように偏相関係数 η2と効果量が計算されます。
    [variance explained by special effect (特殊効果によって説明された分散)] には σ2AxB = 0.102881 を入力し、
    [Error variance (誤差分散)] には σ2 = 1.71296 を入れて[Calculate]をクリックすると計算されます。


    なお、
     要因AxBの2要因交互作用の効果量
     
    fAxB = √ ( 0.102881 / 1.71296 ) = 0.2450815

    もちろん、すでに効果量 f は計算済みなので、G*Powerのメイン画面の入力欄に直接入力してもokです。
    要因AとBの交互作用の偏相関係数についても
    η2AxB = f 2AxB / ( 1 + f 2AxB ) の式に基づいて、
     η2AxB = 0.2450722 / (1 + 0.2450722 ) = 0.05666157 となることも確認できます。

     次の図は、G*Powerのメイン画面の設定内容です。



    要因AxBの相互作用の自由度は Numerator df = 4 です。これは (要因Aの水準数 - 1 ) x (要因Bの水準数 - 1) = 2 x 2 =4 です。
    事後の検定力分析の結果、AxBの交互作用の検定力は Power = 0.4756677 と、あまり高くないことが確認されました。

    同様な計算によって、 AxC の交互作用の検定力 Power = 0.7402635 とある程度の高さがあることが分かります。またBxC の交互作用の検定力 Power = 0.5166079 となり、あまり検定力が高くないことが分かります。詳しい内容は計算用の数表をご覧ください。

 



 3要因A、B、C の 交互作用 

  •  さて、いよいよ3要因A、B、C の交互作用について、その検定力を計算することになります。計算の基本的な考え方は前と同じで、交互作用の残差δi j k を計算して、それから 効果量を計算するための σ i j k2 を求めます。
     3要因の残差 δi j k は次の式で表されます。
       
    δi j k = μi j k - μi * * - μ* j * - μ* * k - δi j * - δi * k - δ* j k

    μi j k はセル(i,j,k)の平均値
    μi * * は、要因A(水準 i = 1,2,3) の三つの平均値
    μ* j * は、要因B(水準 j = 1,2,3) の三つの平均値
    μ* * k は、要因C (水準 k = 1,2,3,4) の四つの平均値

    δi j * は、要因AxBの9個の残差 (i = 1,2,3 と j = 1,2,3 の組み合わせによる)
    δi * k は、要因AxC の12個の残差 (i = 1,2,3 と k = 1,2,3,4 の組み合わせによる)
    δ* j k は、要因BxC の12個の残差 (j = 1,2,3 と k = 1,2,3,4 の組み合わせによる)

    要因AxBxC の水準 3x3x4 = 36個のセルがあるので、3要因の交互作用を示す残差 δi j k は36個の要素からなります。

    A=1A=2A=3
     B  C δ(1jk)δ(2jk)δ(3jk)
    110.333336110.16666944-0.5000056
    120.77779167-0.9444750.16668333
    13-0.55556390.388902780.16666111
    14-0.55556390.388902780.16666111
    21-0.41665560.66665278-0.2499972
    22-0.30556670.222241670.083325
    230.36111111-0.44444720.08333611
    240.36111111-0.44444720.08333611
    310.08331944-0.83332220.75000278
    32-0.4722250.72223333-0.2500083
    330.194452780.05554444-0.2499972
    340.194452780.05554444-0.2499972
    この36個の残差を二乗して合計します。
    その平均値がσ2AxBxC となります。

    σ2AxBxC = 0.185189

    なお、数式は以下の通りです。
    σ2AxBxC = 1 / 36 Σ i,j,k δ2i j k


    計算したσ2AxBxCを分子にして、分母はσ2 = 1.71296 にして
    効果量 f を計算パネルで計算させます。
    効果量 f = 0.3288016 となり、 偏相関係数 η2AxBxC = 0.09756294
    と計算されました。
    この効果量をメインパネルに転送(transfer)して
    検定力 Power (1-β)がどの程度がを計算します。



    検定力 Power =0.5134.. とそれほど高くはないけれども、ひどく低い数値ではないことが分かりました。3要因の交互作用の検定力を高めるためには、とりあえず、36個のセルの各データ数が[3]と低いことから、データ数をそれぞれ 4〜以上として、測定の回数・度数を増やしたら検定力がより高くなることが考えられるわけです。

    以上が、3要因分散分析における検定力分析の実際でした。要因A,B,C の三つの要因の主効果、要因AxB, BxC, AxC の2要因交互作用、そして、要因AxBxC の3要因の交互作用 を計算することで必要な数値を算出しました。
    なお、SPSSのGLM (一般線型モデル)で分散分析した場合の検定力の数値は、ここで示した結果と同じです。したがって、実際にはSPSSの結果をそのまま用いれば良いことになります。注意点としては、SPSSでは標本統計量を用いていることから、G*Powerとは偏相関比の数値が異なることです (変換式が示されています)

    また、「対応のあるデータについての分散分析」といえる「反復測定の分散分析」(ANOVA: repeated measures) については次に説明していくことにします。
    ( G*Power の論文に記載されています → [G*Power 2007] )



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