葛西俊治「身体心理療法」2009-2010
〜イギリス通信〜


  1. タリン (エストニア)でのダンスセラピー・ワークショップ指導 (3/19-20,2010)

    • 丁度良いタイミングで、エストニア出身の関取「把瑠都バルト」が大関昇進確実というニュースがYahooに載っていました。エストニアはバルト三国の中でもっとも北よりでロシアと接する国です。サイズもラトビアと似たようなもので小さな国ですが、それぞれ、強烈な自民族中心主義的な意識があり、1991年に他のバルト三国と一緒にロシアから独立を勝ちとった国です。

      イギリス・ハートフォードシア大学のヘレン先生が主催したケンブリッジでの「オーセンティック・ムーブメント」ワークショップ(2009年12月)に、たまたまエストニアのダンスセラピストのヘレーナさんが参加しており、その後のやりとりの中で、今回、ラトビア訪問後にエストニアでもワークショップ指導を依頼されたものでした。
      ヘレーナさんはタリン大学の「Institute of Fine Arts」の中にあるアート・セラピスト・コースを指導するスタッフで、今回はそのコースに所属する学生(学部およぶ修士課程)などを対象にワークショップを行うことになっていました。もちろん、他のスタッフや舞踏を習ったという人も数名参加しました。


    • ユーロ・バスに乗り遅れたので
      リガからタリンへ向かう AirBalticに乗る羽目に…
      ★続きです!

    • タリンに行けない!?

      いやー、大変なことになりました。まだラトビアのリガです。リガの大通り公園?にあるバス停でタリン行きのユーロ・バス待っていました。冷たい小雨の中で立ち尽くして15分…。コートも荷物も相当に濡れてしまった頃、連れてきてくれたシモーナさんが「これはどうも違うかも知れない…」と近くのホテルにバス停を聞きに行き、あわてて走って戻ってきました。「違う場所です!」。荷物を引きずりながら私はヨタヨタと走りに走り…。別のバス停にいた大型バスが出発していくのにすがりつくように走りましたが、30秒ほど間に合わず、そのままバスは行ってしまいました…。

      シモーナさんは「バス会社は私に間違ったバス停を教えた。」と怒っていますが、とりあえず自宅のアパートに戻り、飛行機の空きを調べて予約してほしいと頼みました。が、自宅のインターネットはなぜかつながらず、電話で飛行機会社に予約をとり、エストニアのヘレーナさんには「遅れるので…」とメールを依頼。

      やれやれですが、実は5-6時間かかるというバスでの旅行は、二日連続で6時間、合計12時間のワークショップを指導した身体にはかなりつらく、正直「飛行機でいけると有り難い…」と願っていたことは事実でしたが、それにしてもきっちりとバスに間に合わないのはカミサマの配剤でしょうか。(飛行距離から考えて、今回のイギリス滞在の中でもっとも高価な運賃となりましたが(^_^;)。

      その後も一悶着あったのですが、それはともかく、写真にあるターププロップのプロペラの飛行機でタリンに向かうことになったのでした。小雪の降るタリンへは45分で尽きました。

    • 雪のタリン空港に降りて、入国ゲートを出るとヘレーナさんが待っていてくれました。「今日の夕方からのワークショップは30分遅れで始めるので急ぎます!」はあ。
      タリンはフィンランドとも物理的に近いだけではなく経済的にも結びついていて、都市は極めて普通に近代化されています。小雪の中をヘレーナさんは車をとばして、タリン旧市街にあるタリン大学の「Institute of Fine Art」の建物へと向かいます。
      ロシア占領よりも以前に建てられたと思われる古式ゆかしい三階建ての建物でした。中に入ると、若々しい学生達が待っていてくれました。何とか間に合ったようです!!

    • 若々しいというのは本当で、小雪が降りすでに真っ暗な戸外ですが、ピアノが二台置かれたレッスン室には、若い学生達は屈託無く,私のレッスンを楽しんでくれています。たぶん、今回、ワークショップ指導をしてきた中でも、身心ともに健やかで初々しい感じの学生達でした。バルセロナでも参加者達は明るかったのですが、それとは違う何とも言えない屈託のなさです。イギリスとは比較にならないくらいに寒く、ロシアにも占領されるなど暗い歴史のあるエストニアですが…。何ともいえない自然さがありました。
      もしかしたら、これが北の,寒さの中で生きている人達の自然の姿なのかも知れない…とふと思えました。

    • 精神科ディケアでの「サーカス・セラピー」!

      はい、「サーカス・セラピー」です。といっても、精神科領域の参加者たちは身心ともに活動量が少ない人達なので、クラウン的な内容を参加者とやりとりしながら進めていくものでした。車座になった参加者一人一人に、ジャグリング用のボーリングのピンのような形のものを投げて渡していくとか、自分一人でそれをくるくる回すとか、隣の人に同時に渡していくとか…。運動や動作としては特に難しさも技術も必要のないレベルで進めていきます。

      a)物との実際の関わり、b)物を介在にした他者との交流・交換(交歓ではありません)、c)何らかのささやかな達成感、が主な要素となっていました。ジャグリングのピン以外では、「布」「ボール」「スティックによるリズム」「くるくる回すリング」「皿回し」など、やはり、a)とb)とc)を基本としてセッションが構成されていました。

      オランダで行われているという精神科領域での「スポーツ・セラピー」、今回の「サーカス・セラピー」。いずれも、身体的運動という物理的身体的事実と「動くこと」というアクションの中に心理的な効果を見いだしているように思います。これについては少し調べる必要がありますが、ヘレーナさんの話では、「サーカス・セラピー」による効果は半年とか比較的長く続く…という研究もあるようでした。

      「ダンス」という枠組みに限定せず、「身体的に実際に何かを体験していくアプローチ」という意味で、今回、タリン大学の関係の施設で行われていた「サーカス・セラピー」は非常に印象に残りました。

      これでイギリス滞在中の海外でのワークショップ指導と研究は終わりとなります。残りの一週間で整理と片付けとをしなければ…。



visiting researcherとして下記にて研究しています。

(C/O) Professor Helen Payne,
303 Meridian House,32 The Common, Hatfield,
Herts AL10 0NZ, UK

School of Psychology,
University of Hertfordshire, UK


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