質的分析としてのKJ法についてのコメント
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★さて翻ってKH法における「カードの集約」についてです。KH法におけるカードの集約の考え方は説明が難しいのですが、「分類ではないし、発想法でもない」と書くと分かりやすいかもしれません。
つまり、トップダウン的に行う「分類」ではなく、「KJ法的な発想」でもない、ということになります。このように書くとまるで禅問答のようですが、実際は意外にも分かりやすいのです。 すなわち、「書かれた内容が類似しているカードが次第に寄り集まる」 ということなのです。 詳細はこちらをご覧下さい↓ 「関連性評定質的分析による逐語録研究 ― その基本的な考え方と分析の実際 ―」 札幌学院大学人文学会紀要 第83号,61-100,2008 (pdfファイル) |
★カード化された逐語録やアンケート内容は「書かれた内容が類似しているものが次第に寄り集まる」という、いわば自動詞的な過程で「似たカードが自然に寄り集まる」…。この過程の詳細は上の論文で確認してほしいと思いますが、もう少し分かりやすい説明を追加しておくことにします。 例えば、あるテーマについて聞き取りをしたとします。ここでは、説明の都合上、複数の人にアンケート形式である質問について聞き取った内容をすべてカード化したとします。一人がカード10枚程度の記述をしたとして、10人の回答者がいればカード枚数は100枚程度になるわけです。
*美馬千秋・葛西俊治 *注意― なお、「カードの集約とラベル付け」は、その作業を終えた後には過剰に反省しないことが重要です。後から見直すといろいろと訂正したいことが出てきますが、そうしたやり直し作業は最低限に留めるようにします。それはなぜかと言うと、前日などに行った「集約作業」の間に、実はカードに書かれた内容を何度も眺めて考えているために、研究者側の理解と認識が毎回、深まっていくことに原因があります。 次の日に見直しをすると、前日の作業の中で深まった新たな認識に基づいて、新たにカード内容とラベルを見てしまうために、「前日に行った自分のカード集約過程は何と未熟で不十分なのだろう…」ということになるからです。これを何度も繰り返して行う方法もありますが、一定の期間内にカード集約作業を終える場合は、集約作業を必要以上にやり直ししてしまわないようにする必要があります。 ★KJ法では作成したKJ法図解などに「作成者の氏名・日付・場所」を記入しますが、「いつ行ったか」ということが大きな意味をもっていることをあらためて指摘しておきたいと思います。文化人類学は現場でのフィールド・ワークによって研究を進めます。現場での実践的な研究活動では、誰がいつどこでKJ法を行ったか…という「氏名・日付・場所」が重要となるわけです。一回の研究で「真理」に至るのではなく、時間的な制約や状況的な制約の中で、事実に基づいて研究を一歩ずつ進展させていくのです。
(10/6, 2012)
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