*アレクサンダー・テクニックについて書かれた本に「ボディラーニング Body Learning」という言葉をタイトルに含んだものがあり「からだの学び」と訳すことができます。それに対して、ここで扱っている「ボディラーニング・セラピー」は、アレクサンダー・テクニックではなく、リラクセイションの身体心理学とともに認知行動療法的な観点をも視野に入れ、心理学的および臨床心理学的な要素を明確に含んだアプローチとして展開されてきました。
舞踏ダンスメソドのワークショップ指導を海外で行ううちに、欧米人は一般に、「身体」を一つの物体として「自分」ということから分離する傾向ないし能力の高いことを発見してきました。リラクセイションをとってみても、日本では自分自身と他者との無意識的な癒着をゆるめ、「自分」ということを取り戻すことを主眼に置くことが多いのに対して、欧米では「自分」ということを一時棚上げして、他者や周囲の事物と融合していくことを通じて「一体感としての安らぎ」をどう実現するか、という展開が多くありました。
日本人の心身の感覚が、精神科医・木村敏による『人と人との間』や哲学者・市川浩による『身の構造』で扱われているように、少なくとも欧米人のそれとは一定程度異なっていることを無視するわけにはいかないだけではなく、そうした差異を明確に取り込む必要がある訳です。