Predominant Information Channel
プリドミナント ・ インフォメーション ・ チャンネル

 なぜ優先情報チャンネルなのか? 

なぜリラックスが難しいのか?

私、カサイト先生はリラクセイションについても書いているので、[そちら]もご覧下さい。

それで、なぜ優先情報チャンネルなのか…ということについてお話しします。長年、リラクセイションの実習指導や研究をしていて感じることは、リラクセイションとは身体のことなのに「大多数の人は身体感覚への関心が低い」のです。
リラックスできないと嘆く人は少なくないのですが、そうした人の多くは自分自身の身体感覚に鈍感だったりするのです。研究の話は省きますが、トレーニングしたり感覚を深めたりしなければ、7-8割の人は「身体感覚に鈍感」だといえます。したがって、リラックスしようにも自分の身体感覚に鈍感なのでうまくできないのは当たり前のことになります。やれやれですね。

したがって、「どうしてこんなに身体感覚に鈍感なのか」という問題が出てきました。結論としては、「異常ともいえるほど身体感覚に敏感・過敏な人が居ること」そして「信じられないほど鈍感な人も居ること」が分かってきたのです。長年、身体心理学・身体心理療法という領域で実践と研究を続けてきましたが、そうした領域が大きく発展しない理由もはっきりしてきました。つまり、身体感覚に鈍感な方が多数派なので、身体感覚を基本にした身体心理学や身体心理療法に対するニーズがない、いや、その価値を分かる人は極めて限られているのです。

身体感覚が鈍感?

「なぜ身体感覚が鈍感なのか」は簡単に答えは見つかりませんが、二つの可能性があります。一つは、大脳での情報伝達や情報処理あるいは神経系などの生理的なレベルで何らかの問題があるという場合ですが、これについてはここでは扱いません。ここで扱うのは、もう一つの可能性の方です。すなわち「身体感覚は普通だとして、なぜそれに対しての関心が低いのか」という「関心」の方向についてです。ただし、これまでの経験では、「関心」という心理的な要素とともに、それが定着して一つの態度のようになった「反応傾向」というように考えています。ここでは、とりあえず、「反応傾向」ということで話を進めていくことにします。

「なぜ身体感覚に関心が向かわなかったり、身体への反応が鈍いのか」と考えていくことにします。いろいろと身体的なレッスンやトレーニングをしてみると、それなりに感覚が開かれていきます。以前にはあまり感じられていなかったことが感じられていきます。中には、元々そうした感性を豊かに持っていたけれども、人生のどこかで、そうした感受性や敏感さを封印してしまった、関心を閉じ込めてしまった…という場合もあることも分かりました。

「感じることはつらいこと」なので、感じないようにするメカニズムが身心に組み込まれていくことは、身体心理療法の基本ですが、そうした研究についてはあらためて説明いたします。
いずれにしても結論は単純ではっきりしています―「多くの人は身体感覚への関心が低く、反応も鈍いためにリラクセイションも難しいことが多い」。残念なくらい分かりやすいですね!

さて、ここからが優先情報チャンネルについて本番となります。
身体感覚に関心が低い大多数の人は、それでは一体何に関心を向けているのだろうか?
彼らが一番関心を向けている、あるいは反応しやすい事柄は一体何なのだろうか?

感覚が使われる優先順序ということ

そろそろ分かってきましたね! 視覚・聴覚・嗅覚・味覚・身体感覚・感情と意志・記憶など、人が関心を持ち注意を向ける感覚には、いわゆる五感+「こころ(に関わること)」があるわけで、身体感覚はその中の一つに過ぎない…ということです。
* 般若心経の「眼耳鼻舌身意」の順番ですね。後で説明します)

ここで問題をひっくり返して眺めてみます。リラクセイションに関心があり身体心理学や身体心理療法に関心をもっている私は、実は身体感覚が優先していると思えるのです。そうすると、それ以外の視覚・聴覚・嗅覚・味覚・感情と意志・記憶などについては、あまり関心が無い?あまり注意が向かない?ということになってしまいませんか?!

いや、テレビや映画を見るのは楽しいし、音楽もよく聴くし、素敵な花の香りは好きだし、おいしいものは美味しいし、心に関わることには心理学をやっている人間として人一番関心があるし、記憶(最近は人の名前が出て来づらいですが(^_^;)にもそれほど大きな問題ないです。だから五感も「こころ」も十分に使っていますよ。

はい、ようやく「優先情報チャンネル」の話にたどり着きそうですね。
つまり、なぜか私が優先的に反応するのは「身体感覚」のようで、そこが優先しているけれども、視覚や聴覚などへの関心がひどく低いわけではなく、単に優先順位が低いだけ…。

そうなのです、様々な感覚や心理的あり方について、それらの間には優先順序がある!
「優先的に注意が向けられる感覚、優先的に取り入れられる感覚情報とその感覚」
これが優先情報チャンネルということです。
*ここではとりあえずの定義。厳密な定義は後ほど示します。

優先情報チャンネルについての研究が、カサイト先生のように身体心理学・身体心理療法を専門領域としているところで少しずつ進んできたかが分かりますよね。元々は、リラクセイションやダンスセラピーがなぜもっと進んでいかないのか…という切実な問題意識から始まったわけです。

※ちなみに、優先情報チャンネル(Predominant Information Channel)のことを明確に指摘したのは、催眠療法の世界を変えて、エリクソン催眠という新たな催眠心理療法を造り出した、アメリカの精神科医、 ミルトン・エリクソン (Milton Hyland Erickson, 1901-1980) です。心理学でエリクソンというと発達心理学のエリック・エリクソン (Erik Homburger Erikson, 1902-1994) が出て来るので混同しないようにしてください。

患者を催眠に的確に誘導するためには、患者が優先的に反応する感覚へと暗示を届けないといけない。そのために優先情報チャンネルという考え方が出てきました。その後を引き継いだのが NLP (Neuro Linguistic Programming) だったわけですが、そちらでは「優先情報チャンネル」という術語と概念が指摘されましたが、優先情報チャンネルについての一般的な内容に留まり、個人差の大きさや多様性についての把握など、そうした事柄の解明を目指すような詳細な研究は行われませんでした。 その理由ははっきりしませんが、NLPというアプローチは研究者によって研究されていったのではなく、どちらかというと実践を重視する実務レベルでの展開と普及へ向かったことが大きく影響していると思われます。
 
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